雇用環境が常に変動し、人材が流動化する現代において、若者の生活スタイルや考え方もどんどん変化しています。
昔から言われていますが、ジェネレーションギャップもますます大きくなることが予想されます。
企業においては、若手社員の育成についての悩みが多く聞かれ、早期に活躍してもらうための支援が一段と急務になっています。
離職率も高い昨今、若手社員をどのように育成したら良いのでしょうか。「今どきの若手社員の育て方」と題して特集します。

2.若手社員の交流を促したい

新入社員研修の時期を終えていったん配属されると、OJTを中心に上司と部下、先輩と後輩という関係の中で、配属された若手社員を育てるというケースが多いと思います。
しかしこれだけでは不十分なことも多く、「職場の人間関係」や「仕事が自分の成長につながらない」などの理由で、せっかく育てているのに離職してしまうことも増加傾向にあります。
こういった問題を防ぐためにも、若手社員の交流を促す機会や場を積極的に作ることで、若手のキャリア支援も含めたサポート体制を構築し、現在抱えている問題を解決する糸口を見つけましょう。


3.若手社員の交流の目的

若手社員に交流を促すといっても、どんな目的で、どんな内容で実施すれば良いのか、どんな結果を望むのか、そのニーズが分からないという場合もあります。
まずは、交流の目的やゴールについて例を挙げてみましょう。

まず第一に、若手社員に交流を促し、結果としてどうしたいのかを明確にします。

目的:「若手社員同士が意見交換を行い、お互いに成長や刺激を得る場を設けたい。」

このような目的で交流する場を設ける場合、実際にその交流から若手社員として得られるゴールは次のようになります。

 ・自分の気持ちをわかってもらえる
 ・他の人の本音を聞ける
 ・自分の課題を発見できる
 ・自分の課題の解決方法を知れる

 

また、こういった交流する機会を設けることで、人事や教育担当者としても若手社員の現在の状態を把握することができます。
担当者にとってのゴールは、次のようになるでしょう。

 ・離職の防止
 ・成長に対する課題の発見(何を教えれば良いのか)
 ・若手社員を取り巻く環境の確認(ハラスメント、残業等)
 ・若手社員のモチベーションをリセットする

 

交流の大目的としては、本質的には、若手社員のモチベーションをさらに高め、自己成長の意欲を高めるということになると思います。
また、新入社員時の教育費用は、企業によって違いはありますが、一般的に20~50万円/人 掛かっていると言われますから、離職が増えればその人に掛けた教育のコストは無駄になってしまいます。そういった意味でも、早い時期に何らかの手を打つことで、モチベーションを継続させる施策はとても重要なのです。


若手社員の交流方法

さて、ここからは交流の方法、交流の仕方について見ていきます。
一口に交流といっても、さまざまなやり方がありますが、研修も含めて、社内でもできるような方法を少しだけ紹介します。

  • バズセッション
    多人数の集団が一つのテーマについて、会議や討論を行う手法の一つ。例えば、「今の仕事で楽しいこと、改善したいこと」などのテーマでまずはペア(2人)で話し合い、その後ペア同士(4人)のグループで話しあい、さらにグループ同士(8人)で話しあう、というように、サイズを大きくし、最後に全体共有していく。最初はフランクなテーマとして場を温め、途中で強制的に話し合うべき内容も含め、そこで若手の本音が聴けるような質問を挿入する。

     
  • この指とまれ
    集団の中の数名を選び、選ばれた人は自分が話したいテーマを発表。他のメンバーは、話したいテーマを選び、指定された時間で話し合う。最初は趣味などのフランクなテーマとして場を温め、途中で強制的に話し合うべきテーマを主催者が示し、若手の本音が聴けるような質問を挿入する。

     
  • 自分コンテスト
    今までの仕事における経験の中で、「うまくいったこと」「失敗したこと」を発表し、競うもの。「その経験でどれだけその人が成長したのか」という視点で評価する。周囲の人の仕事内容を理解することができるとともに、成功体験や悩みの共有もできる。その後に表彰式兼親睦会を行うことも有効。

     
  • オンライン旅行
    事前に「今まで自分が旅行して感動した場所」や「自分が行きたい旅行先」の写真や動画を準備しておき、発表しあう。コミュニケーションを深めるだけでなく、自分や相手の価値観を共有できる。

     
  • サイレントコミュニケーション
    言葉を一切発しないで、模造紙などに「書く」ことで自分の意見を伝え、相手の考えを受け取りながら、議論を進めていく方法。一定時間経過後は、言葉を発しながら議論を深めていく。議論のテーマを若手の本音が聴けるような内容にすることも可能。
     
  • 脱出ゲーム
    制限時間以内に与えられた謎や課題をチームで解き、ゴール(脱出)を目指すもの。チームワークや情報共有、コミュニケーションなどの要素を学ぶことができる。また、ゲーム中の行動を振り返ることによって、自分の強みや課題をとらえることも可能

このように、交流のさせ方の中にも、簡単にできるものから、手の込んだものまでいろいろなやり方や方法があります。こういった内容を社内研修という位置づけで取り入れるものよいでしょう。また、違った刺激を与える方法としては、他流試合という方法もあります。

他流試合について

他社の同じ年代の若手社員と交流させる方法に、「他流試合」があります。他流試合とは、ある課題やテーマを設けて、他の企業のメンバーとディスカッションしたり、一緒に何かに取り組んだり、ある課題について競い合ったりする方法です。一般的に交流研修として実施したり、競い合うような課題の場合は、新サービスの開発、組織問題の解決、戦略策定など多岐に渡ります。
業界や業種によって視点が異なるという気づきや、固定観念の打破が効果として見込まれます。また、視野を広げた状態で、自社の課題や自分自身を見直すことも可能になるのが、異業種交流の良い点でしょう。

 

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若手育成の考え方

若手社員の育て方として、育成のベースとなるキーワードを紹介します。

  • ティーチング
    説明して、相手に理解させる教え方。ポイントは「相手の理解度にあわせた内容・速さで説明する」こと。また、時折「ここまでの内容を説明してみて」と相手に話をさせ、そこで十分に理解できているかどうかを確認することが大切。もし、理解に怪しい点があれば、再度説明をおこなう。(「何か質問ある?」という問いかけや、確認テストの実施なども有効)

     
  • コーチング
    相手に考えさせて、気づかせる教え方。ティーチングを多用してしまうと、自分で考えずに指示を待ってから行動するというクセがつく恐れがある。「〇〇さんはこのような場合、どうすれば良いと思う?」といった質問を投げかけ、相手に自分なりの答えを発言させていく。その際、その発言に対して承認やアドバイスといったフィードバックを行うこと。

     
  • リーディング
    実際に行動を見せて、そのあとに同じ行動をさせて指摘する方法。指摘の際には上記の「ティーチング」や「コーチング」を行う。例えば、新しい業務を任せる場合、まずはどのように進めるのかを先輩社員がやってみせて、そのあとに若手社員にやらせ、その行動についてフィードバック(振り返り)を行う。ポイントは、できていない部分の指摘だけでなく、うまくいった部分の賞賛も含めること

  • 最後に、若手社員を育てる際の大事なポイントをお伝えします。

    目的を伝える

    与えられた業務を「単なる作業」とするのか、「自分の成長の機会」とするのかは、自分自身の捉え方次第で異なってくる。「何をやるのか」という「目標」、「どのようにやるのか」という「手段」だけではなく、「なぜやるのか」という「目的・意義・理由」をもって業務に取り組むことで、部下の成長につげていく。このような考え方を「目的思考」という。

    【三人のレンガ積み】
    中世のとある町の建築現場で三人の男がレンガを積んでいた。
    そこを通りかかった人が、男たちに「何をしているのか?」とたずねた。 一人目の男は 「レンガを積んでいる」 と答えた。 二人目の男は 「食うために働いているのさ」 と言った。 三人目の男は明るく顔を上げてこう答えた。
    「後世に残る町の大聖堂を造っているんだ!」  と。

    競争させる 3名1組になり、ある課題について各組で協力して達成し、達成したチームは次の課題に取り組む。最終的には期間内により多くの課題を達成した組が優勝となる。例えば、自社内の制度や商品知識、資格試験の内容などをテーマとし、各章毎に課題を設け、テストを実施して合格ラインに達成すれば次の課題に進み、3名のうち1名でも合格ラインに達していない場合は、もう一度同じ課題を取り組ませる。競争させる際に「連帯責任」とすることによって、やり方(学び方)を工夫するという経験もできる。
     
    小さな成功を
    積み重ねる
    若手の育成において、いきなりハードルの高い課題をやらせると、課題を達成できなかった場合に「自分はできない」というネガティブなとらえ方をしてしまいかねない。そのため、「少し努力すれば達成できる」課題を設定し、「成し遂げる」という経験をさせることが重要となる。ただし、簡単な課題ばかりだと成長スピードが遅くなるため、時にはやや高いハードルの課題を設定することが望ましい。
     
    他人に教える 学習効果において、もっとも高い効果を生み出す手法の一つが「他人に教えること」である。他人に教えるということは、自分がその内容を熟知していることが求められ、「内容が分かりづらい」「質問しても回答できない」の場合は、理解不足とも言える。ポイントは、一方的に説明をさせるのではなく、時には質問をして理解度を確かめることである。
     
    背中を見せる 「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」という山本五十六の言葉があるが、その中に出てくる「やってみせ」は背中を見せるということも含まれる。新人や若手社員は先輩社員の行動や姿勢を見て、大きな影響を受ける。上司や先輩は常に部下の見本となり、「あこがれの人」になるように精進しなければならない。
     
    承認する
    (ほめる)
    仕事をしている中で大切なのは、その成長を承認(ほめる)することである。誰かに認められたということにより、承認の欲求が満たされ、モチベーションが向上する。また、組織の一員として認めることも重要で、その組織における自分自身の役割(必要性)を再確認できる。これらのことにより、自らが成長していこうという自己成長意欲が高まり、自ら積極的に学ぼうという姿勢につながる。
     

     


さて、若手社員の育成というテーマで、交流から育て方のポイントまで見てきましたが、これらの他にもアプローチの仕方はたくさんありますので、自社の若手社員にはどんなやり方が合うのかを検討し、一つ一つ丁寧な施策を打っていくということが大切です。
何か若手社員の育成等でお悩みなどがありましたら、お気軽にお問い合わせください。