報連相の真の意味  

コラム

新入社員研修の多くに取り入れられている「報連相」。
この言葉を提唱したのは日本青年会議所の会頭を務め、山種証券(現SMBC日興証券)会長だった山崎富治氏であると言われています。

一般的には、新入社員を含めた部下が上司に対して「報告・連絡・相談をしっかりとしなさい」と自発的な行動を促すことを報連相だと認識されています。

しかし、提唱者である山崎氏の著書「ほうれんそうが会社を強くする」(出版:ごま書房)を読めば、報連相が誤った認識で広まっていることがわかります。

山崎氏が言っているのは「報告・連絡・相談ができるような風通しの良い環境を作りなさい」ということ。つまり、部下が報連相を行うのではなく、上司が報連相を行うのです。

山崎氏が報連相を思いついたきっかけとして、次のように著書に記しています。
「いかに多くの知識を集め、社員の力を合わせるかが、経営者としての私の大事な努めでもあった。下からの意見をどう吸い上げるか、みんなが働きやすい環境をどう作るか、温かい人間関係をどう作るか、と常日頃頭を悩ませていたときに思いついたのが、ほうれんそうだった。」

部下が報告をしても、上司が重要視せずに否定をする。連絡をしても無視をして反応もしない。相談しても親身になって聞かずに「自分で考えろ」と言う。
受け手側である上司がこのような状況では、いくら報告・連絡・相談をしなさいと研修で伝えても、「報連相しても無意味だ」と部下は思ってしまうでしょう。

逆に、上司が報告をしっかりと受け取り、連絡に対して反応し、相談に親身になれれば、自然と報告・連絡・相談ができる風通しの良い環境になり、部下は自発的に行うようになるのではないでしょうか。

無論、現在一般的に使われている「報告・連絡・相談をしっかりとやりなさい」という意味での報連相を新入社員に教えることが間違っているわけではありません。自分の弱みを見せたくない、できないと思われたくないという思いから、部下が報連相をせず、はじめは小さなクレームだったものが結果として大きな問題になってしまうケースも多いからです。

そのような事態を防ぐためにも、組織の一員としての自覚を持って自発的に報告・連絡・相談を行うことを教えることは重要です。とはいえ、新入社員への研修だけでは不十分であり、上司側も報連相の真の意味を理解し、新入社員を含めた部下の意見をしっかりと受け止め、適切な反応をすることを認識する必要があることを忘れてはいけません。

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